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記事紹介:『ミークシ』アクション物の冒険人形劇が始まった!

サンダーバード55/GoGo』の製作に関わり、さらに『ネビュラ75』では声優も務めたジャスティン・T・リー&リンジー・リー夫妻が製作した人形劇『ミークシ』に関するカナダの記事の非公式翻訳です。

原文はこちら。

www.stanwinstonschool.com

4/9追記:Gazelle Automationsさんに記事の公開は問題なしとお返事いただきました。

『ミークシ』アクション物の冒険人形劇が始まった!

映像製作者、人形師、そしてSWSCA*1の学生のリンジー・リーとジャスティン・T・リーが、恥ずかしがり屋で羊のように内気な科学者のアクション物の冒険劇を製作する大胆な試みについて語った。

2021年11月27日

『ミークシ』の製作者たち

イヴォンヌ・ヴィラセノール執筆

『ミークシ』はSTEM教育*2を題材とした子供向けの番組で、科学、親友との大冒険、とても大事な静かに過ごせる時間を愛する天才羊を主人公としている。新発明で世界を救うにしろ、単に一人で生きていくにしろ、ミークシはいつも学習に繋がる教訓を与えてくれる。

このアクション物の冒険劇はガゼル・オートメーションズとシャフツベリー・キッズが共同製作したTVOキッズ*3のオリジナル番組であり、ショウ・ロケット・ファンドによって提供されている。各話7分の長さでアクション・エンターテインメント、そして全世代が愛する可愛さの詰め込まれたものである。

二人の熱烈な人形師:チコライナを持つジャスティン・T・リーと、ミークシを持つリンジー・リー。

この楽しく教育的な番組の製作者はSWSCAの学生であるリンジージャスティン・T・リー夫妻である。この夫妻のチームは『ミークシ』の世界を製作するのにすっかり熱中していた。リンジーが製作総指揮、主演、主役の人形造形を行った。それに加えて彼女は数棟の建物も製作した。ジャスティンは監督、人形師、視覚効果統括を務めた。ジャスティンはさらにセットの製作やポスト・プロダクションも行った。各々と、才能豊かなチームが番組を作り上げるのに必要なすべてに手を出している。

『ミークシ』はリンジーの恥ずかしがり屋で内向的な子供時代の経験を部分的にもとにしている。『ミークシ』のウェブサイトによれば、リンジーの願いは「今日の恥ずかしがり屋の子供がミークシと〔自分自身のことを〕結びつけて、静かながらであっても、自分らしくいることが良いことであると感じること」である。

夫妻の写真

SWSCAの共同設立者のマット・ウィンストンがリンジージャスティンと『ミークシ』に関する全てを議論した──発想の元や助言から人物・模型・セット製作まで。

サンダーバード』とラム・チョップの融合

ミークシのクルーとクランペット博士、ミークシ、パーシー・ディーエム市長

リンジージャスティンが人形劇製作や、セットの製作、ストーリー・テリングに魅せられたのは子供の時だった。二人が持つ物理的な効果*4への熱望が、二人の独自のSFアクション子供番組を作らせるに至った。

「子供時代に物理的な効果[『ターミネーター』や『ジュラシック・パーク』等の映画]を体験すると、子供の頭であっても、これは触ってわかるもので物理的なものだということを感じます。ここから温かみを感じられるのです」とジャスティンは言う。「私を育てたもう一つのものは、子供時代にカナダで『サンダーバード』の再放送があったことです。画面に映るすべてのもの──キャラクターやモデルや背景──が作られたものでした。全てが本物とさえ感じられました」。

リンジーは『ラム・チョップズ・プレイ・アロング』といった手で操演する人形をパペットを使ったカナダの番組を観て育った。

「私は『ラム・チョップ』の番組やシャール・ルイス*5、そしてルイスが人形を操る方法に取り憑かれていました。私はいつも擬人化した動物に熱中していたのです。こうしたものがいつも本当に心に響いていました」とリンジーは話す。「そこで、そうした動物達と、『サンダーバード』型の模型や模型の世界を組み合わせるというのが『ミークシ』のある意味の原型でした」。

『ミークシ』を創る

ジャスティンが描いたミークシ、チコライナ、JJの初期の原画

『ミークシ』より前に、リンジージャスティンは2015年に英国ITVの『サンダーバード50周年記念エピソード』*6に関わっていた。ここで二人は、人形と模型の撮影技術を習得した。

「私たちは、当時の番組製作に関わっていたような人と製作を行った上に、本当に才能に恵まれた製作者たちもいた」とジャスティンは話す。

そうした製作者の一人が人形師で特殊効果屋のリチャード・グレゴリー(『テラホークス』、『ドクター・フー』、『ダークナイト』)だった。グレゴリーは良き指導者であるだけでなく友人となった人でもあった。

「リチャードは私達二人に教えてくれました──なぜなら私たちは人形を製作し、小道具などを組み立てていたからです──リチャードはどのように行うのかを見せてくれ、このことは私達でもできるという自身すら与えてくれました」とジャスティンは話す。「まさにリチャードがこれまでどのように技術を身に着けてきたかであり、それを見せてくれて教えてくれました。「さあ、君達にもできるよ」と。そして実際に思ったのです「そうだ、できるぞ!」と」。

製作が終わりカナダに帰国した後、リンジージャスティンは『ミークシ』を創ることを話し合っていた──達成したいと頻繁に二人が相談していたアイディアだ。

「母が2016年に亡くなり、どれだけ人生で大きな出来事が起こっても再考させるものだと話し合いました「何がしたい?」」とリンジーが話す。「そして思いました「本当にこれがやりたい。本当に『ミークシ』を作りたい」と」。

ジャスティンはVFXアーティストとして広告業界で働き、リンジーは出版業で働いていたが、二人は仕事をやめ、ピザ屋の裏に工房を構え『ミークシ』の製作にとりかかった。

セットで頑張るリンジーとミークシ

「小さなピザ屋の裏の部屋は、オーブンが近いためとても暑かったです」とジャスティンは回想する。「そこが『ミークシ』の製作を始めた場所でそた──ピザ屋の裏にいるというのは、大家さんが撮影中にピザを持ってうろついているようなものでした」

リンジージャスティンはピザ屋で『ミークシ』のパイロット版を5本製作した──今では「短編映画」と呼ばれている。二人は一年半の間ピザ屋の裏にいて、そこから広いスタジオへと移動した。

二人は『ミークシ』を放送局や製作会社に売り込んだ。やがて、カナダの製作会社にたどり着き、自分たちの番組を配信するという夢がついに叶い、10話分から始まった。

『ミークシ』のキャラクター達を造る

『ミークシ』に登場するのは擬人化された動物たちで、それぞれが番組に魅力を与えている。『ミークシ』に影響を与えたのは『ラム・チョップ』だけでなく、ジム・ヘンソン──特に『エメット・オッターズ・ジャグ=バンド・クリスマス』*7だ。

ジャスティンは登場人物達を「人形と本物の動物の間のどこか」と説明する。

「カエルのカーミット*8は明らかに漫画のような見た目でとてもある種の風刺画でもあります」とジャスティンは説明する。「『エミット・オッター』の人形は人形のようというわけでもなく、本物の動物に似ているというわけでもありません。こうしたものが私達の言う「これを目指そう」というものでした」。

『ミークシ』の登場人物は以下である。

ミークシ(羊)
チコライナ(鶏)
ゴード(スパニエル)
クランペット博士(ハムスター)
パーシー・ディーエム市長(豚)
タイガー・マーサー(虎)

『ミークシ』の〔製作を始める〕前に、リンジー曰く、これまでに作ったことがあるのは布でできた手で操演する人形だけだった。しかし彼女の考える『ミークシ』には形のある構造物を下地に必要かもしれなかった。

ジャスティンの描く全方向からのミークシの頭部

「私たちはミークシの美しさについて考えて、ジャスティンが頭部の大きさと形の準備段階の原画を描きました」とリンジーは話す。「ミークシの頭部はひし形のような形で……この形はだれも布地だけで作り上げられるものではありませんでした。その下に頑丈なものが必要です。」

リンジージム・ヘンソンの人形の様式を再現したかったが、それまでやったことはなかった。

「ここでスタン・ウィンストン学校が出てきます」とリンジーは話す。「私はスタン・ウィンストン学校に入学し、BJ・ガイヤーによる手とロッドで操演する人形コースを視聴しました。全部で10回見る必要がありました。時に、今日に至るまで、他の番組を創るときでも、未だに見返しています……この講義映像なしではできなかったかもしれません。」

試しに製作されたミークシの頭部。白目は後に取り外された

リンジー曰く、ガイヤーのパターンを完全に真似て、最初の硬い人形を製作した。この時に彼女が学んだのは次のことだった。

どんな種類の材質がうまくいくのか その材質にどのように模様をつけるのか バージ・セメント*9をどのように扱うのか

メ~キング*10中に撮影されたミークシ

試験的に人形が製作された後、ミークシはリンジーが作った二体目の硬い人形となった。ミークシはその後何度も反復され、リンジーはミークシを「一番乱雑な」人形と呼んだ。しかし私たちはミークシは恥ずかしがり屋の羊の科学者で、絶えず活躍するということを注記しておきたい。

ミークシを作り終えると、リンジーは様々な人形の様式とほかの登場人物を組み合わせた。

リンジーがお気に入りにの記者チコライナの撮影準備を行っている

例えば、ミークシの親友で記者のチコライナは、単純に注意深く大きな球体から頭部が製作された。

スパニエルでミークシの助手のゴードは硬い素材からではなく、単なる布の手で操演する人形である。元々ゴードは『ミークシ』に登場する予定ではなかったが、SNS上でのファンの声を受けて、『ミークシ』にも登場することとなった!

クランペット博士が風船を持っている……そして彼がどれだけすごいのかを話そうとしている

ミークシのライヴァルであるクランペット博士は頭部の模様に関するBJ・ガイヤーの講義に触発され最後の最後に製作された。リンジー曰く、それぞれの人形のために修正の必要なテンプレートに模様を適応させた。クランペット博士の三角形の頭部と外見、とどのつまりボウル型の髪型は1960年代の事務労働者や優等生をもとにしている。

グレイス・ブレイニフがミブキヴィルの元スター俳優のパーシー・ディーエム市長を製作した。カメラマンがこの表情はまるで日当でパー・ディーエム雇われているだけでここにいるかのようだと言ったことから、リンジージャスティンはこの元気良さげな豚に名前をつけた。

製作中のミークシのロボットの58

58はミークシのロボットだ。ジャスティンが58の原画を描き、しばしば協力してくれるベン・クレイグが製作した。このロボットは主として3D印刷で製作され、ジャスティンの原画にそっくりだった。58は特別なキャラクターで、この名前は製作の前に亡くなったリンジーの母へのオマージュである。リンジーは母の誕生日1958年12月31日を使い、番組の他の箇所でもこの日付を登場させている(例:ヘイ・ユー号の尾翼)。リンジーの母こそが子供時代に『ラム・チョップ』への情熱を起こさせた人だった。リンジー曰く、母が亡くなったことはそもそも『ミークシ』を製作する「推進剤」となった、と。

『ミークシ』に登場する他の登場人物たちはまとめて製作されたものであり、リンジージャスティンには人形が不足していたため、四体のみが借りられた。

『ミークシ』には様々な様式が人形の登場人物に取り入れられ、それぞれに確立した外見と性格が与えられた。

冒険心のある全地形型機の製作

ヘイ・ユー号に乗る乗員達

ミークシは科学者で、実用的で(スタイリッシュな)乗り物を開発する。この素晴らしい乗り物は番組の見せ場の一つであり、その中でも特にミークシのヘイ・ユー・ジェット機がそうだ。

しかし、すんでのところで番組に登場しないところだった、とジャスティンは明かす。

「[ヘイ・ユー号は]元々は番組に登場しない予定でした」とジャスティンは話す。「TVOと議論して言われたことが「番組にもう少しアクションを加えられたらどうするか」ということで、私達は「もしミークシが屋根の上から発進するジェット機を持っていたらどうする?」となりました」。

発進用意!

ジャスティンは『サンダーバード』に着想を得たヘイ・ユー号を、かの1960年代の素晴らしい宇宙船模型のように機能させたかった。そのスタイルは番組のどんなアクションの瞬間にも完璧だった。ジャスティンは農作業用機械を見て回った後ロケット型ジェット機のようなものを具現化した。最終的なデザインは60年代の『サンダーバード』と『宇宙家族ジェットソン』*11とトラクターを組み合わせたものとなった。

特に、コックピットの部分は、側面に様々な部品が露出し、正面に様々なツールのホイールがある点で1950年代のジョン・ディーア〔John Deere〕・トラクターを彷彿させる。ここに穀物サイロに影響を受けたエンジン・ハブがつく。ヘイ・ユー号はリチャード・アシュトンによって3D印刷され、部分的にエアフィックス社製のガーダー・ブリッジで装飾された。この部品は1960年代に『サンダーバード』でも使われた。

ヘイ・ユー号:コンセプトから実物へ

コズミック・サイロ号のために、ジャスティンはロケット船としての穀物サイロを作りたかった。彼とリンジーは『ウォレスとグルミット*12が「身の回りにあるものでも新たな解釈を与える」ような方法に影響された。ジャスティンは穀物サイロと1960年代のロケットの外見をもとにして原画を描いた。ベン・クレイグが模型を製作した。

「私達が製作した他の大きな乗り物はバロウカーで、これは街中を走り、水陸両用車なので水上さえも走れるのです」とジャスティンは言う。

第4話「パイ盗賊団を追え」に登場する、ウェザリング塗装の施された水陸両用のバロウカー

ジャスティンとリンジーの当初の考えではバロウカーの製作をファイバーグラスで挑戦したいということであったが、ポリウレタンの流し込み樹脂と、真空成形で製作した上部と組み合わせることで、透明な窓を製作した。バロウカーは実際に動く前照灯や、全ての車輪にスポンジのサスペンションが個別に付けられた──このことについてジャスティンが言うことに、再び『サンダーバード』に影響されたということだ。『ミークシ』に登場するどんな乗り物が登場する全てのアクション映像では、模型がタングステン・ワイヤーで引っ張られた。

ヘイ・ライド交通は主としてスチレン・シートで製作された。ジャスティンはこの発想はピザ屋時代に遡ると話す。リンジージャスティンは二人とも公共交通機関のファンで、常にミブキヴィルに地下鉄があることを思い描いていた。そこで、ミークシを地下鉄に乗車させることで、公共交通機関〔が番組に必要であること〕を主張する方法を発見した。

地下鉄駅

ヘイ・ライド交通の外見は50年代のトラクターをもとにして、『サンダーバード*13の模型製作者ヒルトン・フィッツシモンズが製作した。フィッツシモンズは全ての窓を切り抜き、転写シールで装飾した。本編で地下鉄は大きく見えるにも関わらず、これは実際には模型である。リンジージャスティンがウェザリング塗装を施し、広角レンズを使って一秒120フレームで撮影することで、より大きく見せた。

撮影段階になると、何かを造るために何でも使える。これは特に58の海賊船の場合がそうだった。スー・ホン・キムが発泡スチレンの部品を持ってきて、たくさんのアイスキャンディーの棒を接着剤でつけて作った。キムと同じようにジャスティンが『シンプソンズ』の大ファンであることを知っていたので、キムは紫の布を船にかけた。ネッド・フランダーズがしたように。

ミブキヴィルを造る

ミブキヴィルの模型の地平線

ミブキヴィルは、リンジーが「東京と農場の融合」とぴったりな言葉で説明する美しさがある街である。

ミブキヴィルの建物が乱立している地平線の映像は、紙とプラモデルの部品とレーザーカットされた部品でできている。街の正面にある湖を造るために、リンジージャスティンは大きな保管用コンテナに水を溜めた。そして、セットの端とコンテナの端にキャンヴァスを掛けた。そこから砂や岩のある岸辺に見えるようにチンチラ・ダスト*14テンペラ・ペイントやパウダーを使って鉄道模型のように仕上げた。

模型製作者のジェフリー・マッキーがミブキヴィルの地平線の湖に水を入れる

建物の映像を撮影するに当たり、ミークシの現代的なアパートの建物の外観は紙とハードボードで製作された。二人が説明する製作過程は、ジャスティンの原画から始まり、その形をレーザーカットで作り、さらに塗装とウェザリングを施して、さらに手を加えて、特徴を出した。ある友達が紙でプランターを作り、雑草を外から集めてきてプランターに入れ、建物の外観のために良いデティールを拵えた。

リンジーがミークシのアパートの部屋の内部でウェザリング塗装を行う

WETAワークショップの年配の模型製作者で『サンダーバード』にも一緒に関わったデイヴィッド・トレモントがリンジージャスティンに物語を伝えるためにどのように部品を壊すかということだった。二人は彼の助言に従って、塗装とウェザリングに依って全てがより美しく見えるようにした。透明なプラスチックを窓に使用した。そしてアパートの各階にはバルコニーがあるので畳んだティッシュペーパーを掛けて照明をその背後に置いた。番組の相対的な照明計画に関して、夫妻は全てジェフリー・マッキーのおかげと言っている。

クランペット研究所は友人のロバート・フィンドレイによって製作された。研究所の美学は、リンジージャスティンによれば「工業的」「暗黒卿」そしてどことなく「かわいい」というものだった。ディール・ヌーガが模型を製作した。

アニメーターのディール・ヌーガがクランペット研究所の模型を組み立てる

リンジージャスティンが模型製作を愛するのは、この作業が本物の環境を作り出すのと同じ技術であるためだ──長い退屈なセット製作を除いて。

しかし模型の建物であっても、必要以上に製作に集中させられる。「自宅に鉄道模型の線路を設置する人は、見えるところ全ての隅や割れ目の細かい作業をやります」とジャスティンは話す。「つまり、模型撮影のとてもクールな点は、特に建物が乱立している映像においては、カメラに映る部分だけを装飾すれば良いということです。何もない箇所はたくさんあります。」

ジェフリー・マッキーが通りの撮影の準備を行う

リンジージャスティンはカメラが作り出す視点*15をベテランの特撮技師ブライアン・ジョンソン(『サンダーバード』『エイリアン』『帝国の逆襲』)から学んだ。ジョンソンは『サンダーバード』〔50周年記念エピソード〕のスタジオをある日訪れ、カメラが作り出す視点を使って遠くにあるものを近くに見せる方法を勧めた。

「クランペット研究所の模型では、大きな岩と丁寧な装飾をカメラの正面に置くことで実現しようとしました。実物はその背後に小さな建物があるだけです」とジャスティンは話す。

三次元芸術とストーリー・テリングの未来

リンジーと粘土のクランペット博士の模型、ジャスティンとチコライナ

自らの魔法の王国を造り上げることになると、リンジージャスティンは実際に身の回りにあるものがスクリーンでは動いているようにみせられることに大きな喜びを感じている。

「『サンダーバード』は1960年代に製作され、ずっと何度も再放送が行われ、様々な世代が同じように反応しました「私の玩具たちがスクリーンでは生きている」と」とリンジーは話す。「私が思うのは、これこそが人々が模型を見た時に思うことだということです。一緒に遊べる実物を見られるのはとてもクールです。模型を観察するというのはとても没入感のある体験です。でも明らかに時代はCGです。」

リンジーがお試しの硬い頭部を製作する

三次元芸術とストーリー・テリングを使うことは、ジャスティンとリンジーの心のなかでは特別な位置づけである。「私達がたくさん話し合ったことに、芸術家としてどう生きていくかということでした」とリンジーが話す。「芸術家としての生活をコンピューターの前で過ごしたいのか? たまにはそうです。でも──人員の観点であっても製作の観点であっても──実際に手を動かして何かを造るというのはとても良いことです。」

リンジージャスティンが話すのは、芸術の種類──実際のものかデジタルのものか──が製作班のエネルギーにも影響するということだ。二人が説明するのは、ブルー・スクリーンやグリーン・スクリーンの張ってあるステージにいることに対して、本物の小道具をいじりセットの準備をする事ができる時に興奮を簡単に感じられる、ということだ。

「こうした撮影をするときは、とても集団的で、人と話さなかったり、大音量で音楽を聴くという選択肢はないので、皆で同じ歌を聴きます」とジャスティンは話す。「皆で一緒に作り上げ、セットにいるときにはちょっとした冗談を思いつきます。」

左上から時計回りに、ベン・クレイグがヘイ・ユーの格納庫を組み立てる、グレイス・ブレイニフとベン・クレイグがミブキヴィルの正面を製作する、スー・ホン・キムがバロウカーの内観を製作する、ジェフリー・マッキーがミークシの科学机の仕上げを行う

リンジーが信じているのは、こうしたストーリー・テリングは放送局が二人のアイディアに対して寄せた反応の理由ということだ。「私が思うのは、放送局の反応が『ミークシ』が特に今日の子供向け番組の王国の中では目立ち始めるという考えでした」とリンジーは話す。「この番組は独特のものです。『ミークシ』は他とは違うものになります。」

実際の模型を製作する技術を磨いたことで、リンジージャスティンはセットを物理的に作った場合とCGで作った場合とでは、物理的なもののほうが10年後でもカメラ映えするということを知った。

「デジタルで、本物の写真のような、特に私達の番組のような空想的なものを造り上げるのは非常に難しいです」とジャスティンは話す。「そこで、たまにCGと混ぜているにも関わらず、私達にとって現実的ではないと考えることは、CGモデラーとアニメータを何十人も抱える大きなスタジオと競い合うということです。しかし、私たちは物理的なものを作り、それを撮影して、使うことには投資できます。」

若いクリエイターへの助言

第9話「ロケット“コズミックサイロ”を救え」より宇宙にいるミークシ

リンジージャスティンの『ミークシ』を創る旅路は、情熱と重労働と自分自身を信じることが、文字通り夢を実現させるということを思い出させてくれる。ミークシのように、夫妻はその発想だけが限界のあるものだということを学んだ。

夫妻が子供の頃に三次元芸術に触れたことが、二人を想像の世界へと没頭させることとなった──その道筋は『ミークシ』という二人の独自の世界を作ることへと繋がり、この番組は人々を楽しませ、人々に物事を教え、そして力づける。

夢を追い求める若いクリエイターに対する二人の助言は簡単だ。情熱を追って内面のオタクを抱きしめる、ということだ。

ミークシと彼女のお気に入りのロボットの友人の58

「もし何かを作りたいのであれば、幸運にもスタン・ウィンストン学校のような素晴らしいオンラインの資源があるような時代に幸運にも私たちは生きています。私はカナダに住んでいますが、この素晴らしく才能のある作り手達からオンラインでどのように行うのかを学べます」とリンジーは話す。「もしやり方がわからなくても、理解する方法はたくさんあります……あなたがどんなことをやりたいにしろ、それを学ぶ方法があるのです。私が思うのは、学びを止めるものはなにもないということです。ただやるだけです──作りたいものを作り、欲しい物を作り、愛を持って製作し、そしてそれを世界に向けて発信し、人々と共有するのです」。

彼女は続ける「私が『ミークシ』について思うことは、特に、プロジェクトを持っている人たちは本当にプロジェクトに注意を払っているということです……だから、私は、造り上げるものの背後にあるどんな輝きも完成品に現れると思うのです」

「どんな作り手でも、芸術家でもクリエイターでも、もしあなたが何かに打ち込んでいて、そのことに対してオタクであるなら、そのことを恥じないでほしいです」とジャスティンは続ける。「いかなる時に〔どんな人を〕見かけても、特に成功しているような人を──声優のモーリス・ラマーシュのような、彼は子供の頃ダフィー・ダック*16のような印象で周囲を苛立たせていたと言っていた。けれども彼は気にせずに続けてやっていた。今では[キャラクターの声をやることが]彼の仕事となっている。もしあなたが本当にオタクであるものがあれば、そこに傾倒してほしい。そのことを受け止めてほしい。そのことについて知るべきことを全て調べ上げてください。」

ミークシの視聴リンク

ガゼル・オートメーションズ公式サイト

*1:訳註:Stan Winston School of Character Artsの頭文字。

*2:訳註:Science, Technology, Engineering, and Mathematicsの頭文字。科学・技術・工学・数学を扱う。

*3:訳註:カナダの教育テレビ局。オンタリオ州当局の管轄下にある。

*4:訳註:CGでない実物を使った視覚効果。

*5:訳註:前述の番組の人形師

*6:訳註:日本では2022年に『サンダーバード55/GoGo』として劇場公開された。

*7:訳註:1971年のラッセル・ホーバンの本を原作とした1977年のテレビ特番でジム・ヘンソンが監督をした。

*8:訳註:『セサミストリート』に登場するカエル。

*9:訳註:Amazonを見ると接着剤と記されている

*10:訳註:原文は「Baa-hind the scenes」と、羊の鳴き声「baa」と「behind」が掛け合わされている表現。

*11:訳註:1960年代前半のアメリカ・カナダのTVアニメ。80年代にも製作が行われた。

*12:訳註:英アードマン・アニメーションズクレイアニメ

*13:訳註:50周年記念エピソード

*14:訳註:砂?

*15:訳註:原文はforced perspective. 適切な日本語は一体何でしょうか……? 意味については「圧縮効果」などで画像検索していただければおわかりいただける……はず。

*16:訳註:アヒルのキャラクター。